ビクターアビエーション社におけるエンジンの試験は、業界中でも他に類のない多くの項目を検査するプログラムであり、じっくりと数日間をかけて実施されます。同社が独自開発した最新式の移動式エンジン・テスト装置(通称”Big Red”)には、プロペラの実際の推力を測定する荷重計が搭載されています。多くのエンジンのテストセルでは、エンジンには何もつけないで運転し、クランクシャフトからギアを介して取り出した回転力を電気的に出力として計測する方法がとられています。
しかし、より正確なエンジン特性を判断するためには、実際の飛行運用状態を再現して各種のデータを集めなくてはなりません。このためビクターアビエーション社では、エンジンが仕上がると実際の飛行運用状態をシミュレートするために、プロペラや全てのエンジン補機類、吸気システム、排気システムを取り付けます。この状態でエンジンを油圧稼働式のエンジン・マウントに取り付けます。エンジンを様々な状態で運転しながら、回転数、吸気圧力、温度などのパラメータと共に実際にプロペラから発生される推力を記録して行きます。プロペラが発生する推力によりエンジンが進行方向に引っぱられる力を、電気式の荷重計回路を使用して計測し、全速度域のエンジン推力をリアルタイムに記録して行くのです。
試験時には、オイル系統に特殊な蛍光染料を投入して運転を行います。試験後、ブラックライトの下でエンジンを点検することにより、オイル漏れの欠陥箇所がないかを調べます。
最高レベルの品質管理を実現するために、全ての ”Power-By-Victor” エンジンは納品前に最大出力設定での試験を受け、ビクター社の厳格な試験基準を満たさなくてはなりません。万一、試験基準が満たされない場合、そのエンジンは出荷されずに再度分解され、問題解決のための加工と調整が徹底的に行われるのです。